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【自著紹介】近藤克則著「健康格差社会-何が心と健康を蝕むのか」医学書院,2005

 豊かな日本でなぜ,5倍もの健康格差が見られるのか?格差社会はなぜ健康に悪いのか?その影響プロセス-社会と心,そして健康とをつなぐプロセス-についての理論仮説を,それを支持する実証研究の知見とともに提示した本である. その全体像に迫るために,部分をなす次のような疑問について,実証研究の数々と「社会疫学-健康を規定する社会的因子を研究する疫学の一分野」の理論仮説を提示した.健康教育や介護予防はなぜうまく行かないのか?結婚はなぜ健康によいのか?ストレス対処能力の高さと健康の関連は?格差社会は,なぜ「負け組」だけでなく「勝ち組」をも不健康にするのか?健康によい社会・経済政策とは? 格差拡大を推し進める構造改革でもたらされる「痛み」が,時に死をも意味すること,所得格差の拡大などを通じてソーシャル・キャピタルが切り崩されれば,社会のストレスが高まり「勝ち組」をも含む国民全体の健康度が悪化する可能性などを示し警鐘を鳴らした.また,これらの実態と影響プロセスを解明する「社会疫学」の課題も述べた. 医療・福祉の臨床実践家から,社会(保障)・経済政策など,社会のあり方を考える全ての研究者・ジャーナリスト・政治家まで,幅広い方々に手に取っていただきたい本である. 目次 I 社会と心と身体と 1. 健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか 2. 生活習慣病対策と介護予防はなぜ難しい? II 社会・人間関係と健康 3. 生物・医学モデルを超えて―パラダイムとは何か 4. 上位層は健康で,底辺層は不健康!?―社会経済状態と健康 5. なぜ結婚や友達は健康によいのか―人間関係と健康 III 社会と健康をつなぐもの―心の大切さ 6. なぜ学歴・職業・所得(社会経済的因子)が健康に影響するのか 7. うつは心の風邪か―抑うつの重要性 8. 「病は気から」はどこまで実証されているのか ―主観的健康感・心理・認知の重要性 9. ポジティブな「生き抜く力」は命を救う―ストレス対処能力 IV 社会のありようと健康 10. 人はまわりと比べて生きている―相対所得仮説 11. コミュニティの力,再発見!―ソーシャル・キャピタル 12. 介入すべきは個人か社会か―ハイリスク・ストラテジーの限界 V 社会と健康をめぐる課題 13. 基礎科学としての社会疫学の課題 14. 「健康によい社会政策」を考えよう 15. 終章 社会疫学―社会のための科学・21世紀のための科学

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