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新しい近藤克則のページを公開しました.

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ご挨拶

 2014年4月1日から千葉大学 予防医学センター 環境健康学研究部門に移籍しました.

 予防医学センターでは,0次~3次の予防にまでカバーする広義の予防医学の研究にあたります.0次予防では本人の努力の及ばない「健康の社会的決定要因」などマクロ環境要因の解明や政策研究などに取り組みます.3次予防では,既に抱えている疾患や生活機能の低下やQOL低下の予防・増進のためのリハビリテーションや介護予防,エンドオブライフケアなどまでカバーしたいと思います.

 なお今後も日本福祉大学の客員教授として同大学の大学院・学部での教育,健康社会研究センター長としてwell-being(幸福・健康)な社会の実現に寄与する研究も進めてまいります.今後とも,ご協力をよろしくお願いいたします.

千葉大学予防医学センター環境健康学研究部門

千葉大学大学院医学研究院中核研究部門環境健康科学講座公衆衛生学 教授

日本福祉大学 健康社会研究センター長・客員教授

近藤克則

自己紹介にかえて-「あとがき」からの抜粋(一部修正)

この本「『医療費抑制の時代』を超えて-イギリスの医療・福祉改革」(医学書院,2004)は,私にとって「第3分野」への挑戦となる本である.

第1分野:プライマリ・ケアを担う臨床医

 第1分野は,地域医療あるいはプライマリ・ケアを担う臨床医としての仕事であった.必要に迫られ出版したマニュアル3部作(いずれも共編著,医歯薬出版)は幸い版を重ね,「当直医マニュアル」(初版1988年)は2005年度版で第9版,「プライマリ・ケア・マニュアル」(初版1990年)が第5版(2003年),「臨床医マニュアル」(初版2000年)は第3版(2004年)になっている.「上医は国を医し,中医は人を医し,下医は病を医す」という中国の格言を医学生時代に知った.千葉大学医学部卒業時(1983年)には,いずれ医療政策や社会医学に関わる仕事がしたいと,公衆衛生学教室(吉田亮教授,安達元明教授)に研究生としてお世話になった.一方で,僻地(愛知県北設楽郡東栄町)の医師であった亡父のような「どんな患者でも診られる医師」へのあこがれも捨てがたかった.そんな医師になるには,得意とする専門分野の患者だけ診ている大学病院ではダメだと考え,市中の一般病院(船橋二和病院)を臨床研修先に選んだ.そこには,多くの救急車がやってきて,内科・外科・小児科に加え,診療所での医療も経験できるローテート研修もあり,健康教室から往診まで経験を積める条件があったからである. 「大学に残った方がよい」と親切に忠告してくれる人も少なくなかった.当時は大学病院を離れ市中病院で臨床研修する者は1割もいなかったからである.しかし,「プライマリ・ケアのできる臨床医をめざすのなら,モデルとなる指導医の元で,他の専門職種に揉まれながら,数多くの患者を診るべきだ」と信じ大学病院を飛び出した.そこでは忘れがたい患者さんとモデルとなる優れた先輩臨床医に恵まれた.しかし,第一線医療の現場は,確かに忙しく,「下医」として一人前になるのも大変であった.本をゆっくり読む時間がないのに,現場で使えるマニュアルがなかった.「なければ自分たちでつくればよい」と考える仲間に恵まれ,あるべき姿と現実の間のギャップを埋めようとしたのが,マニュアル3部作であった.私の第一分野での挑戦は,異端視されながらも大学病院から飛び出すことからはじまった.あれから約20年,本年度(2004年度)から,ようやく臨床研修が必須化され,市中病院での臨床研修が当たり前となった.自ら選んだ道の正しさが,20年の時を経てようやく公認されたようでうれしくもある.

第2分野:リハビリテーション医学の臨床研究

 第2分野は,日本内科学会指導医(当時)・日本リハビリテーション医学会専門医としての臨床研究の分野である.それらをまとめたものに「脳卒中リハビリテーション」(共編著,医歯薬出版,2000〔初版〕,第2版印刷中)がある.私がリハビリテーション医学を専門に選んだ頃,日本リハビリテーション医学会は会員数2266人(1983年当時)とさほど大きな学会ではなかった.しかし,高齢化が進むにつれ障害を持つ患者が増え,リハビリテーション医学へのニーズが高まることは明らかだった.疾患だけではなく要介護者のQOL向上を目指す,いわば「中医」でありたい.それがリハビリテーション医学を専門とした理由である.いまやリハビリテーション医学会は会員数が一万人に迫る大きな学会になった.第二分野でも,時代を少し先取りしていたと考えている.

第3分野:医療福祉の経済学・政策科学

 さて本書は,私の第3分野「医療福祉の経済学・政策科学」分野での挑戦である.今までの医療制度改革論議の論調をみていると,主に二つの点で私には納得がいかない.一つは,経済的側面の話が飛び交い,臨床レベルを踏まえた論議が乏しい点である.日本では,事実に基づく政策論議をしようにも,実証的な根拠が不足している.「医療・福祉における臨床と社会科学の両面の視点を持つ実証研究が,今後重要になる」それが臨床医から研究者に軸足を移す決意をした第一の思いであった.もう一つ納得がいかないのは,社会科学では避けては通れない価値判断の次元の問題である.日本では医療制度改革の中心課題が,「公的医療費を抑制すること」と見なされている.日本の医療が抱えている諸問題は,はたして医療費を拡大しすぎたことが原因なのであろうか. 重要なので繰り返すが,日本医療の主な問題点は,他の国々に比べ医療費が多いことや効率が悪いことではない.もっと質を高めること、安全性や患者の願いに応えることを課題とすべきである.それを医療費の拡大なしに行うのは,不可能ではないかもしれないが,きわめて困難である.今の流れのままでは日本の医療は歪んでしまうと,医療の現場で働く多くの者が感じている.しかし,マスコミや多くの国民は気づいていない.現時点では少数意見かも知れないが,効率に配慮しつつ公的医療費を拡大する医療政策へと転換すべきである.そのための実証的な根拠や方法を示す研究者も「上医」の1つの姿であろう.その一端を担いたい.それが,臨床医から研究者への転身に至る私のもう一つの思いであった.もはや医療費を抑制するだけで,あるいはそんな政策を批判するだけで済む時代ではない.どこに無駄があるのか評価をし,医療費の使い方やその成果を説明することが問われる時代が始まっている.今後は,「医療費抑制の時代」から「評価と説明責任の時代」へと向かう. これが第3分野で私がつかんだ兆しである.先に述べた第1分野や第2分野でもそうであったように,今はまだ少数派であっても,やがては多くの人が当たり前のこととして認めて下さるようになると期待している. 効果的・効率的で公正な医療・介護制度のために,この分野の社会科学的研究に貢献したいと決意を新たにしている.

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